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有事に鉄壁の備え 韓国軍を大解剖 본문
韓国軍の上陸訓練(韓国国防省提供)
今年4月以降、長距離弾道ミサイル発射や核実験といった北朝鮮の軍事挑発が続いた。朝鮮人民軍約119万人に対し、韓国軍は約65万5000人と兵力は圧倒的に下回る。しかし、核兵器が使われない通常戦争なら韓国軍が勝利するというのが専門家らの見方だ。韓国は今夏、北朝鮮の核やミサイル攻撃に備えた国防計画を発表するなど、北朝鮮に対する軍事的対応を強化している。サイバー攻撃や海上での軍事衝突などさまざまシナリオに沿い、新たな兵器の導入などでさらに鉄壁の備えを進める韓国軍を“大解剖”してみた。(ソウル 水沼啓子)
■「核には核で対応」
北朝鮮は5月25日午前、2度目の地下核実験を強行した。この日の午後開かれた韓国国会・国防委員会で、李相熹国防相(当時)は「核には核で対応する。韓米間には対北朝鮮を含む核抑止力計画がある」とし、「米国の核の傘の中で北朝鮮の核使用を抑止し、北朝鮮が有事に核を使う意図が捕捉されれば、核施設と発射基地、運搬施設などを攻撃する計画だ」と述べ、強硬に対応する姿勢を示した。
さらに6月16日にワシントンで行われた米韓首脳会談の合意文書には、米国の「核の傘」による韓国防衛を意味する「拡大抑止力」が明記され、北朝鮮の核攻撃には米韓が共同で対応することが確認された。「核には核を」体制が改めて強調された形だ。
「ブラックベレー」と呼ばれる最精鋭たちが集まる韓国空挺部隊の上陸訓練(韓国軍提供)
■韓国空軍、F15K戦闘機で対応
北朝鮮軍が海上の軍事境界線付近で軍事挑発した場合、韓国空軍はF15K戦闘機を直ちに投入する構えだ。KF16などの戦闘機のほか、広域防空用のパトリオット、ナイキなどの地対空ミサイルなどを配備して北朝鮮の挑発に備えている。
F15K戦闘機には、射程68キロの中距離空対空誘導ミサイル「AIM120」と射程20キロの赤外線誘導の短距離空対空ミサイル「AIM9」が装着されている。これらはパイロットのヘルメットに付けられた照準器を通じて作動する。
また、F15Kが地上を攻撃をする場合、直径3メートルの誤差で、1・2メートルのコンクリートの防護壁を破壊することができる「AGM84H」ミサイルを利用し北朝鮮の主要軍事施設を攻撃する。
■サイバー戦司令部を創設
韓国国防省は6月下旬、2020年を目標にした「国防改革基本計画」の修正案を発表した。北朝鮮が大量破壊兵器(WMD)を使用する際、その前に打撃を加える能力を高める計画が盛り込まれるなど、北朝鮮からの攻撃への対応を最優先にした内容となった。
つまり北朝鮮に対する監視・偵察や精密攻撃、迎撃能力を拡充するというもので、北朝鮮で核やミサイル発射の動きが捕捉されれば、北朝鮮地域でその動きを遮断するために先制攻撃も辞さないということだ。
「ブラックベレー」と呼ばれる最精鋭たちが集まる韓国空挺部隊の上陸訓練(韓国軍提供)
北朝鮮のWMDへ対抗するため、現在、北朝鮮の平壌-元山以南までしかカバーできない韓国軍の精密打撃能力を、2020年までに北朝鮮全域に拡大する計画だ。
また、国家安全保障上の危急的課題として急浮上しているサイバー攻撃に対応するため、来年中には、サイバー戦司令部の役目を担う「情報保護司令部」も創設される。
◎核攻撃防護システム構築
北朝鮮の核攻撃備え、事業費1000億ウォン(約77億円)を投じ、青瓦台(大統領府)と軍の基地などに電磁パルス(EMP)被害を防ぐ防護システムを構築する。
EMPは核爆発で発生する電磁波で、コンピューターや通信機器を麻痺(まひ)させ、指揮統制機能を停止させることができる。ハワイで核実験をした場合、数千キロ離れた米本土の西海岸都市のすべての街灯が停電するほどの威力という。
またグローバルホークを2015年ごろに、米国から導入する予定だ。グローバルホークは赤外線探知機などを搭載し、20キロの上空から30センチほどの物体も識別でき、偵察衛星レベルに迫る戦略兵器として期待されている。
「ブラックベレー」と呼ばれる最精鋭たちが集まる韓国空挺部隊の上陸訓練(韓国軍提供)
北朝鮮の地下核施設や長射程砲を配備した洞窟(どうくつ)などの地下軍事施設を破壊できる、レーザー誘導の特殊貫通弾「バンカーバスター」も数十発が来年導入される計画だ。バンカーバスターは米国外への輸出が厳しく制限されているが、このほど韓国への売却が承認された。
バンカーバスターは、米国が1991年の湾岸戦争のときに、深さ約30メートルの地下で指揮するイラク軍司令部を攻撃するために特別に設計された。
ステルス機やF15A戦闘機を利用し、バンカーバスターを投下した後、レーザーで誘導し、目標物に攻撃する。爆弾に装着された約2000キロの弾頭はすぐには炸裂せず、地下20~30メートルまで貫通してから爆発するように設計されている。
■戦時、北に予備軍10万人投入
韓国国防省当局者が韓国メディアに明らかにしたところによると、戦時には韓国軍が介入した北朝鮮地域を安定化させるため、10師団の予備軍10万人を投入する計画もあるという。
当局者によると、韓国の予備軍は北朝鮮住民を統制、保護し、また韓国軍に抵抗する残存勢力の排除などの任務を遂行する。この作戦を担当する師団は、戦争勃発からおよそ50~60日後に北朝鮮地域に投入される計画だ。
空中強襲訓練(韓国国防省提供)
黄海上にある韓国最北端の島から北朝鮮の動きを監視する韓国海兵隊員。遠方に見える陸地は北朝鮮